創業者・若林克彦
設計技術者であった創業者・若林克彦は、27歳の時、大阪国際見本市で米国製の戻り止めナットを手に取りました。その製品は、ナット上面にスプリングをかしめることで戻り止め効果を発揮するものでした。しかし若林は、「この構造では製造工程が複雑になり、コストも高くなるのではないか」と考えます。そこで製造コストを下げるため、スプリングの代わりにリング状に打ち抜いた板バネをかしめる構造を思いつきました。わずか数時間で完成したこの製品は、機能性だけでなく、シンプルで美しいデザインも高く評価され、さまざまな業界へ急速に普及していきました。
出荷数量は右肩上がりに増加し、昭和30年代後半には売上15億円を達成。一見すると、まさに順風満帆でした。
創業者・若林克彦
板バネかしめナットの作図
しかし、「板バネかしめナット」は、激しい振動や衝撃が加わる設備にも使用されるようになると、新たな課題が浮かび上がります。
板バネを固定するかしめ強度以上の荷重がかかった時に板バネが外れ、事故につながるケースが日に日に増加していきました。作業者が負傷し、損害賠償を請求された事案もありました。
クレームが相次ぐ中、若林は「いつか人身事故が起こり多くの人が犠牲になるのではないか」という恐怖心で不安な日々を過ごしていました。
そこで若林は、利益よりも安全を優先し、「板バネかしめナット」に代わる製品の開発に挑む決断を下しました。この決断は、利益を優先する利己的な経営から「お客様の安全・安心を第一に考える」利他の経営への大きな転換点となりました。そもそも「ねじはなぜゆるむのか」という原点に立ち返ることにしました。調べていくうちにボルトとナットの遊間(ガタ)が原因であることがわかりました。その隙間を完全に埋める方法を考えれば、すべての問題解決につながることが理解でき、頭の中の霧が晴れたようでした。
それ以降、毎日どのようにすれば隙間を埋めることができるのかを模索していました。
ある日、神頼みのつもりで、近くの神社に参拝に行きました。そこで、鳥居の柱と貫を固定している「くさび」を見て、「これだ!」とひらめいたのです。このくさびの原理がボルトとナットの遊間(ガタ)を埋める構造に応用できるはずだと考えました。「これなら事故をなくせるかもしれない」そう確信した瞬間、長く立ち込めていた霧が晴れるような感覚に包まれました。
それからは、毎日のようにどのようにすれば「くさび構造」を1つのナットに応用できるのか試行錯誤を繰り返しました。しかし、1年間模索しましたが、どうしても1つのナットでくさび機能を持たせることができず行き詰まってしまいました。一方、「板バネかしめナット」はお客様からクレームを受ける毎日。「なんとかして早くくさび構造のナットを完成させないといけない」という思いでいっぱいになりました。
日々試作を重ねる中で、若林は、凹凸2つのナットを組み合わせることで、くさび構造を実現することができていました。「この構造ならまるで溶接したようにボルトとナットを一体化させることができる」その性能には確かな手応えがありました。
そこに大きな壁が立ちはだかります。ナットを2つ使用する構造は、現場で受け入れられるのか。施工性はどうか。コストは上がらないか。部品調達は問題ないのか。技術への確信はある。しかし、ビジネスとして成功する保証はどこにもありませんでした。
一方で、この間にもゆるみによる事故は発生していました。「利益を優先するのか、安全を優先するのか。」若林は、自らに問いかけます。「私は何のために、この製品を開発しているのか。」答えは1つでした。
「一刻も早くねじのゆるみで困っている人を世の中からなくしたい」
その強い想いが若林を奮い立たせました。若林は、ビジネスの常識よりも、安全を優先することを選び、凹凸2つのナットを組み合わせた構造を採用する決断を下したのです。
この決断から、くさびで一体化させる究極のゆるみ止めナット「ハードロックナット」が誕生したのです。
今では、ハードロックナットは国内のみならず、世界各国で高い信頼をいただき、さまざまな社会インフラを支えています。創業者・若林克彦が貫いたモノづくりへの情熱と、お客様を第一に考える“利他の精神”は、今も社員1人ひとりに受け継がれています。
創業者のあの日の決断は、世界の安全・安心を支え続ける企業の原点となり、ハードロック工業はその想いとともに、これからも世界へ安全・安心を届けていきます。
1.価格が高くなる
ナット単体のイニシャルコストは高いと感じられる方が多いです。しかし再使用が可能で、ゆるまないという点からLCC(ライフサイクルコスト)を大幅に削減。ボルト折損事故による損害を未然に防ぐ役割を考慮すると、大きなトータルコストの削減につながります。
2.重量が重くなる
鉄であれば1.5倍以上の重量になります。しかし、2種類のナットでロッキングする構造なので、さまざまな素材で製造が可能です。鉄より軽い、チタンやアルミ、樹脂の材料の場合、鉄のナット1つよりも軽量化できるメリットがあります。
3.ナットの高さが高くなる
凹凸構造が機能する一般ナットとほぼ同じ高さの薄型も製作できます。また、相手部材に凹加工を施すことで、凸ナットの高さのみでの対応も可能になります。
4.2回締めることが面倒
一般的な戻り止めナットはプリべリングトルクタイプのため、工具なしではナットを着座させることができません。しかしハードロックナットは、指締めで凸ナットを着座させることができるため、2回締めても、非常に作業性が良いです。
5.1つ失くすと機能しない
建築業界のお客様には、ビニールパックで凹凸ナット一まとめにしたものを使っていただくケースもありました。
安全は目では見えません。ハードロック工業のナットは陰ながら皆様の安全・安心を支えています。
もしもを起こさせないために、日々お客様からの声を真摯に受け止め、製品づくりに取り組んでおります。

神社の鳥居から着想

ハードロックナットの作図
-背景調整500×500-説明書きあり.png)
ハードロックナット立体図①
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ハードロックナット立体図②
ハードロックナットの構造についてはこちらをご覧ください。