トータルコスト・費用対効果に関するQ&A
従来の軸受用ロックナットや舌付き座金と比較して、コスト面でのメリットは何ですか?
初期部品費だけでなく、加工工数・組立工数・メンテナンス費用を含めたトータルコスト(TCO)の大幅な削減に貢献します。
従来の舌付き座金を用いた方式では、シャフトへのキー溝加工や座金の折り曲げ作業といった付帯工数が発生していました。SLBはシングルタイプのプリベリングトルク型ロックナットであるため、舌付き座金が不要となり、キー溝加工工数および組立工数を削減できます。さらに、高い戻り止め性能により初期予圧量を長期間維持できるため、予期せぬ設備停止(ダウンタイム)損失や保全人件費の抑制が可能です。
設備の長寿命化や品質安定化にはどのように寄与しますか?
軸受に適正な初期予圧量を長期間にわたり保持し続けることで、予圧抜けやガタつきに伴うベアリングの早期損傷・異常摩耗・異音トラブルを根本から防止します。
また、SLBは軸対称形状を採用しており、ナット単体での重心バランス精度はJIS B 0905の「G6.3~G16」を確保しています。さらに、シャフト側のキー溝加工が不要となることで軸全体の回転アンバランスも抑制され、振動や発熱を抑えた安定稼働と設備全体の長寿命化を実現します。
再使用することは可能ですか? 部品交換コストへの影響はありますか?
はい、高い戻り止め性能を維持したまま繰り返し再使用が可能です。
市場にある一般的なプリベリングトルク型ナットは、2回目の使用時にはプリべリングトルク発生箇所が大きく変形し、初期プリべリングトルクも大幅に低下します。そのため、重要箇所での再使用は原則禁止されているケースが多くあります。この最大の課題に対しSLBは、強靭なSCM435(クロムモリブデン鋼)の採用と独自の変形かしめ機構により、10回の繰り返し着脱試験後も高い戻り止め性能を維持できることが社内試験で実証されています。定期点検・オーバーホール時のナット交換頻度を大幅に削減し、ランニングコストの抑制に直結します。
性能・仕様に関するQ&A
SLBのゆるみ止め機構(戻り止め構造)の原理を教えてください。
当社独自の高精度塑性加工技術により、ナット上部の2箇所を加圧変形(かしめ加工)させています。
この2箇所のかしめ部が精密なバネ効果(スプリング効果)を発揮し、ねじ山に対して安定した摩擦抵抗(プリベリングトルク)を発生させることで、強力な戻り止め効果を実現しています。ISO 16130に準じたユンカー式軸直角方向振動試験においても、優れた軸力(初期与圧量)保持性能(約80%以上保持)が実証されました。
一般的なプリベリングトルクタイプのナットは再使用ができず2回目の使用で効果半減すると言われていますが、SLBが10回繰り返しても性能を維持できるのはなぜですか?
「かしめ加圧の作用方向」と「SCM435の優れた材料弾性特性」の2点が理由です。
- シャフト軸に対する直角方向(軸直角方向)への作用
一般的な板バネかしめや摩擦リング型とは異なり、SLBは、プリべリングトルク値を安定させるために、不可能と言われていたねじの有効径の管理を特殊測定機器を使って可能にしました。かしめ箇所をシャフトの軸心に対して直角方向(ラジアル方向)に均等に働かせる構造となっております。これにより、シャフトねじ山へ局所的なに無理な面圧がかからず、ねじ山の損傷がほとんどおきないようになっております。
- クロモリ鋼(SCM435)による形状復元力
靭性と弾性限界が高いSCM435を採用しているため、着脱を繰り返しても初期のかしめ形状が塑性変形(へたり)しにくい特徴があります。
社内試験においても、10回繰り返し着脱を行っても初期とほぼ同等レベルの高い戻り止め機能(プリベリングトルク)を維持できる結果が得られており、重要設備・軸受部位でも安心して再使用していただくことができます。
シャフトのキー溝加工が不要になることで、力学・設計上でどのようなメリットがありますか?(応力集中・回転バランス)
主に「応力集中の排除による疲労破壊リスクの大幅低減」と「回転体の幾何学的アンバランスの解消」など大きな安全・品質上のメリットがあります。
- 応力集中(切り欠き効果)の排除による破壊リスク低減
従来のキー溝加工部(特に底角部)には高い応力集中が発生し、回転曲げやねじり荷重が繰り返しかかる軸部では疲労破壊の起点となりやすいことが弱点でした。SLBの採用によりキー溝を完全になくす(ストレート軸化する)ことで、応力集中そのものを根本から排除し、シャフト本来の疲労強度・安全率を大幅に向上させることができます。
- 回転バランスの向上(振動・異音の抑制)
シャフトにキー溝を削ると、その断面欠損によって回転軸周りの質量分布が非対称となり、動的アンバランスの原因となります。キー溝のない滑らかな真円シャフトと、バランス精度「G6.3~G16」を有するSLBを組み合わせることで、中高速回転時における不要な振動・騒音やベアリングへの偏荷重を防止できます。
なぜ材質はSCM435(クロムモリブデン鋼)のみのラインナップなのですか?(S45Cやステンレスの対応について)
2箇所のかしめ部による「バネ効果の復元性」と「繰り返し使用時のプリベリングトルク維持性能」を最大限発揮するための材質としてSCM435が最適であるためです。
- S45C(機械構造用炭素鋼)の場合
素材の弾性限界や耐疲労性の関係上、2回目の着脱でプリベリングトルクが大きく低下してしまい、当社の安全基準・性能維持を満たすことが困難です。
- ステンレス鋼の場合
加工硬化や素材弾性の制御が難しく、現時点の技術検証ではねらい通りの安定したバネ効果を持続的に発現させることが困難です。
以上の理由から、過酷な荷重下でも十分なねじ山強度(一般ロックナットの約2倍)と安定した戻り止め性能を担保するため、現在はSCM435に限定して製品化しております。
製作対応サイズを教えてください。また、今後の大型サイズへの展開予定はありますか?
標準ラインナップとしてはM10~M40までをご用意しております。
将来的にはM40を超えるサイズ(M50クラス等)につきましても、お客様の設計要求やご相談に応じて、将来は製作対応を検討しております。他社製品等からの置き換えや新規設計での大径サイズ(M50まで)適用をご検討の際は、ぜひ営業窓口までご相談ください。
耐食性や表面処理の仕様について教えてください。
現在の標準仕様は「黒染め(四三酸化鉄皮膜処理+防錆油)」です。
油中環境や一般的な屋内機械設備にはそのままご使用いただけますが、水や湿気、軽微な腐食環境が懸念される用途に向けて、防錆・耐食性に優れた「無電解ニッケルめっき仕様」などの追加展開を現在検討・準備しております。特殊な使用環境への適合につきましてはお気軽にお問い合わせください。
既存のシャフトにキー溝加工がある場合、そのまま流用・設計変更できますか?
はい、そのままご使用いただけます。
SLBは独自の加圧変形構造により、ねじ山を削ることがないため、金属粉(切粉)の発生は起こりません。そのため、キー溝加工が施された既存シャフトに締め込んだ場合でも、ねじ山を傷めにくく、安定したプリベリングトルクを発揮します。既存設備の設計変更やシャフト仕様の共通化・標準化がスムーズに行えます。
施工性・効果に関するQ&A
取付けにあたって、フックレンチなどの特殊工具は必要ですか?
必要ありません。一般的な四つ溝型ベアリング用ロックナットとは異なり、SLBは外径六角形状を採用しています。
現場でお使いの市販の標準的な六角スパナ、メガネレンチ、ソケットレンチを用いて、誰でも簡単に締付け・取外し作業が行えます。専用治具・特殊工具の手配や管理、高所・狭小箇所への工具持ち込みの手間を削減できます。尚、弊社においても専用のスパナヘッドを検討しております。でき次第、弊社ECサイトで購入できるようにさせていただきます。
取付け時の注意点や向き(表裏)はありますか?
はい、取付け方向が決まっております。
必ず座面側(刻印のない平滑な側)からシャフトへねじ込んでください。ナット上部(刻印面側)の2箇所にかしめ部が配置されているため、上下逆向きでのご使用はできません。また、取付け完了後は、シャフトのねじ余長が1ピッチ以上出ていることをご確認ください。
締付け時に専用のグリスや潤滑油は必要ですか?
専用品をご用意いただく必要はありませんが、締結トラブル(かじり・焼き付き)を防止し、安定した締結力を得るため、ご使用前に必ず現在ご使用の潤滑剤(ペーストタイプの潤滑剤を推奨)をねじ部に塗布してください。
※製品出荷時は黒染め処理に伴う防錆油のみが塗布された状態となっておりますので、そのままの締め込みは避けてください。
メンテナンス時の取り外し・再使用の手順や注意点はどうすればよいですか?
取り外しは、六角工具を用いて通常通り戻し方向に回転させるだけで、容易に取り外しが可能です。
SLBは実験上、10回程度の繰り返し着脱しても高い性能維持を確認しております。再使用の際は、ねじ山部およびかしめ部に異物の噛み込みや著しい異常摩耗がないか目視確認し、更に、指締め時点でシャフトのねじ山がSLBの上面から出ないことを確認の上、再度、現在ご使用の潤滑剤を塗布した上でご使用ください。相手側シャフトのねじ山を傷めにくい構造のため、分解・再組立作業も安心・確実に行えます。