米国航空宇宙規格:NAS(NATIONAL AEROSPACE STANDARD)3350/3354に記載された加速振動試験が一般にNAS試験と呼ばれているものです。航空機業界向けの試験が元になっているため、加速(減速)環境、高温環境での影響を重視する試験となっています。
上の図はNAS3354に基づく取付器具の模式図です。
ハードロック工業では「NAS3350/3354に準じる衝撃振動試験」をNAS試験と呼称しています。
「準じる」と呼称する理由は、ハードロック工業で平常実施するNAS試験と、本来のNAS3350に記載されたNAS試験とでは、主に以下の点で異なるからです。
1.試験ナットは全てインチサイズで規定されている。
2.治具に締結したナットを高温で6時間加熱する。
3.締結のトルクは全て指定されている。
以下に示すのがNAS3350に規定された締付けトルク表を、メートル換算し締付けトルクをN・mに再計算したものです。
また、この3項目以外にも米国航空宇宙規格では、適応されるボルト・ナットの材質は耐熱合金が中心になっており、使用する潤滑剤も指定されていたり、さまざまな基準が設けられています。
正しくNAS試験を行うにはこれらの基準を全て守る必要がありますが、日本国内向けの製品に対して行われているNAS試験においては、NAS試験に準ずる形の試験が一般的となっています。
(1)試験片ナットを前記表の加熱前の締付けトルクで、4回着脱します。
5回目に加熱前トルクで締付けます。
(2)締結体一式を電気炉に入れ、800℉+25℉(425±2 ℃)又は450℉+25℉(230±2℃)で6時間加熱します。
※メートルねじは、235±15℃で6時間加熱する。
(3)上記設定温度で加熱後、SAE20油相当の機械油をボルトに塗布し、加熱後の締付けトルクでナットを締付けます。
(4)ボルト、ナット、ワッシャーにマーキングを施し、試験を開始します。
(5)試験条件は、振動周波数1750~1800c.p.m.で設定し、30,000cycle実施しますが、
30,000cycle前に各ナットとボルト間のズレが360°以上になった時点で試験を中止します。
(30,000cycleは約17分です)
(6)試験終了後のナットの、亀裂もしくは破断部分の有無を10倍に拡大し検査します。
4種類の材質と4種類のナットを用い、試験を行います。 材質(4種類)×試験ナット(4種類) = 16の組み合わせ
※1つの組み合わせにつき2set試験を行います。
ボルト | 六角ボルトM16×首下長さ70 生地 |
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ナット | 六角ナット(1種) 、六角低ナット(3種)ハードロックナットM16×2.0 生地 |
材 質 | S45C調質 、SCM435調質 、アロイC276 、Ti-6Al-4V(チタン合金) |
等 級 | S45C調質 、SCM435調質-2級 / アロイC276 、Ti-6Al-4V(チタン合金)-1級 |
加熱温度 | S45C調質 、SCM435調質-230±2℃ |
アロイC276 、Ti-6Al-4V(チタン合金)-425±2℃
HLN | ハードロックナット SN+SW: 六角ナット(1種)+ ばね座金 |
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WN | 六角ナット(1種) 、六角低ナット(3種)ハードロックナットM16×2.0 生地 |
HLN | 凸ナットを加熱前トルクで4回着脱し、その後凹ナットを4回着脱します。 |
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WN | 下ナットを加熱前トルクで4回着脱し、その後上ナットを4回着脱します。 |
SN+SW、SN | 試験方法どおりに着脱し、締付けます。 |
(1) 試験体を治具に締結し、加熱前トルク(34.3N・m)で締付けます。
(2)指定温度(425±2℃)で6時間加熱した後は自然冷却しました。
(3)SAE20油相当の機械油をボルトに塗布し、加熱後トルク(68.7N・m)で締付けます。
(4) マーキングを施し、試験を開始します。
以下のような形で試験の結果が得られました。
この結果ではHLNが材質を問わずゆるみが生じていないことが分かります。